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加齢性変化について

加齢性変化とは?

私たちの体には20代を過ぎると様々な加齢性変化が生じ、それに伴い機能の低下が起こります。私たちの細胞はいつかは機能を失います。細胞の分裂により新しい細胞を再生することは可能ではありますが、分裂の回数には限りがあるため、いつかは様々な臓器の機能の低下へとつながります。肌であれば張りを失い、肺は肺活量が減り、骨はもろくなるといった加齢性変化は誰にでも起こる正常な老化と言えます。しかし、ここで大切なのは、この加齢性変化には大きな個体差と臓器差があることです。ある人はいつまでたっても若々しく、またある人は老化現象が早く表れます。また、ある人は若々しくても、腎臓だけは平均よりも早く老化が始まっている、ということも起こりえます。

加齢性変化をいかに遅らせるか、というのは、私たち人類の夢そのものです。現在私たちの健康寿命を奪う第3位と4位は老衰と運動機能の低下であり、それらは特定の疾患というよりも老化そのものであることも特筆すべきことです。私たちの平均寿命は着実に伸び続け、女性の二人に一人、男性の四人に一人が90歳を超えるようになった今、私たちの興味はいかに一年でも長く生きながらえるかよりも、いかにいつまでも若々しくいられるかに移りつつあります。

生活習慣と加齢性変化

私たちの生活習慣や健康管理が加齢性変化に大きな影響をおよぼすことは広く知られています。実際に、厚労省によると生活習慣を起因とする疾病には癌、高血圧性疾患、脳血管疾患、心疾患、糖尿病といった死因の半分以上が含まれ、最近では認知症までもが生活習慣病の一つとして認識され始めています。その一方で、、米国国立衛生研究所によると、80才を超えても20-30年もの若さを保つ「スーパーエイジング」の人がいることがわかっており、生活習慣により、加齢性変化に違いを生み出すことができることを説いています。

*:https://www.nia.nih.gov/health/cognitive-health-and-older-adults

健康診断と健康管理の重要性

健康的な生活をすることの重要性は、おそらく揺るぎない事実と言えるほどの研究データが蓄積されています。しかし、必ずしも、私たちは皆20代から修行僧のような生活をするべきというわけではありません。そこには様々な価値観や、リスク―ベネフィットの関係などが複雑に絡まっています。私たちの生活でリスクが知られていることは数多くあります。飲酒、喫煙、過食、運動不足といった生活様式や、血糖、血圧、コレステロール、肥満といった健康指標があり、その一方で、それらの管理は人生の楽しみと相反する場合もあります。その中で、個人が自分なりの判断を下しながら生活していくことになります。そこでは一概に、何が正しくて何か間違っているかを決定することはできません。しかし、確かなのは、各個人がインフォームド、すなわち、自分の健康状態について適切な情報を持つことのメリットです。これがまさに健康診断の役割です。

一次予防と二次予防

例えば、ここに10人の人がおり全く同じ生活をしたとしても、同じ加齢性変化を持つとは限りません。私たちの肌は日光などの環境にさらされるほど劣化していくことが知られていますが、漁師で毎日海に出ていてもいつまでも若々しい肌を保っている人がいる半面、日光に浴びると直ぐに肌の炎症を起こしやすい人もいます。後者には日よけ用のデバイスやサンスクリーンが重要な対処法になります。同様に、様々な検査を通して各種臓器の健康状態をモニターし、加齢性変化を早期に知り、生活習慣を早期にただすことが大切です。予防医学ではこれを一次予防と呼んでいます。一次予防ではまだ私たちは何の疾病をもたず、医師に診断を仰いでも、診断がつかない可能性が高い状態、すなわち未病の状態です。健康診断の大切な役割の一つはこの一次予防です。

健康診断のもう一つの役割は二次予防、すなわち、病気の早期発見です。ここから先は医療分野になります。生活習慣病を考えるうえで、この一次予防と二次予防の関連性は非常に重要です。私たちの健康は、臓器の機能や何らかの健康指標が一定の値を超えて初めて疾病、あるいはその可能性が非常に高い状態となり、二次予防の対象になります。逆に言うと、一次予防の段階では、ある種の加齢性変化やそれを表す指標が劣化しても、将来必ず疾病になるとは限りません。一次予防の段階で生活習慣を改善しなくても、健康でいられる可能性はあります。また、健康診断の結果がよかったのに病気になる可能性もあります。そこで、二次予防の早期発見まで何もせず、具体的な病気になった時点でそれに対処する治療を施す方が効率的ではないか、という考え方ができます。その一方で、多くの生活習慣病は、一度発病すると後戻りできない病気が多々あります。腎臓、肺、脳などは、一度失われた細胞や機能を回復させるのは非常に困難です。ですから、一次予防の時点で病気の先駆けとなる因子をモニターし、何らかの兆候が表れた時点で、生活習慣改善を通した予防的措置を行うのが、最も効果的対策と考えられています。