脳の萎縮は防げる?年齢に負けない脳の健康習慣とは
- macky
- 8 時間前
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「脳の萎縮」と聞くと、「年をとれば仕方がない」と思う方が多いかもしれません。たしかに、年齢とともに脳の働きは少しずつ衰えていきます。しかし、最近の研究では、中年期から始まる脳の萎縮や白質の変化には、毎日の生活習慣が大きく関わっていることがわかってきました。バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠を心がけることで、脳の若さをできるだけ長く保つことも可能です。
このコラムでは、年齢に負けない脳の健康を守るためのポイントを、わかりやすくご紹介します。
脳の萎縮とは
まず、「脳の萎縮」とは文字通り、脳の体積が縮んでしまうことを指します。加齢による自然な変化のひとつではありますが、過度に萎縮が進むと、記憶力や判断力などの認知機能の低下を招きやすくなります。

上記の図は、脳のMRI画像を用いて、健康な脳と萎縮が進行した脳を比較したものです。上段に示されているのは、萎縮がほとんど見られない健康な脳の断面図です。脳の表面や内部の構造がしっかりと詰まっており、脳室(中央の黒い部分)や脳のすき間(外側の黒い部分)は狭く保たれています。
一方、下段の画像は、脳萎縮が進行した状態を示しています。加齢や生活習慣の影響などにより、脳の体積が減少し、脳室や脳のすき間が拡大しているのが特徴です。特に、脳室が大きく広がり、脳の表面にも深い溝が目立つようになります。これは、脳の神経細胞や組織が減少した結果、脳全体が縮んでしまうためです。
このような変化は、記憶力や判断力の低下など、認知機能の衰えと密接に関係しています。画像を比較することで、脳萎縮の進行がどのように脳の構造に影響を及ぼすのかを視覚的に理解することができます。日々の生活習慣を見直すことが、脳の健康維持にとっていかに重要かを示す一例です。
この現象が若い世代よりも中年期以降で顕著になるのは、長年にわたる生活習慣が脳に影響を及ぼすからとも考えられています。つまり、脳の萎縮は"年齢だけ"の問題ではなく、食事や運動、睡眠など、普段の習慣が大きく影響しているのです。
食事の工夫で脳をサポート
バランスの良い食事と抗酸化食品
脳を健康に保つためには、まずはカラダを作る栄養バランスが重要です。糖質・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルといった栄養素をバランスよく摂ることが基本となります。特に、脳はエネルギー源としてブドウ糖を多く消費しますが、甘いお菓子や清涼飲料水などに含まれる過剰な糖質は肥満や生活習慣病を引き起こし、脳の機能にも悪影響を与える恐れがあります。スナックや甘い飲み物に偏らず、ご飯・野菜・果物・魚や肉などを組み合わせたバランスのよい食事を心がけましょう。
あわせて注目したいのが、抗酸化作用のある食材です。ブロッコリーやトマト、ベリー類、ナッツ類に多く含まれるビタミンCやビタミンE、ポリフェノールといった成分は、脳を含む全身の細胞を酸化ストレスから保護してくれるとされています。普段の食事に野菜や果物、ナッツを取り入れて、脳を酸化ダメージから守りましょう。

良質な油を選ぶ
脳の約6割は脂質でできているともいわれます。必須脂肪酸と呼ばれるオメガ3系脂肪酸は、脳の神経細胞の働きをサポートするとされ、青魚(サバ・イワシ・サンマなど)やエゴマ油、亜麻仁油などに多く含まれています。一方、トランス脂肪酸を多く含む加工食品や外食の摂りすぎは、脳の炎症や生活習慣病リスクの増加につながる可能性が示唆されています。料理に使う油をオリーブオイルやえごま油に変える、週に1~2回は青魚をメインにした献立にするなど、普段の油選びから意識してみましょう。
適度な運動が脳を活性化
有酸素運動で血流アップ
脳の萎縮や白質病変(※白質病変は、脳室付近の白質に現れる特定の異常な変化です。白質は、脳の情報を伝える大切な役割を担っています。この部分に異常が起こると、記憶力や判断力、歩行などの機能が低下しやすくなります)には、血管の健康状態が深く関係しています。
運動をしない生活が続くと、血液の流れが悪くなり、脳に十分な栄養や酸素が届きにくくなってしまいます。その結果、脳の細胞が傷つきやすくなり、萎縮や白質病変が進みやすくなるのです。
ウォーキングや軽いジョギング、自転車こぎ、水泳などの有酸素運動は、血液の流れをよくして、脳に必要な酸素や栄養をしっかり届けるのに役立ちます。運動は激しくする必要はありません。短い時間でも、こまめに体を動かすことが大切です。たとえば、最初は1日15分くらいから始めても大丈夫です。週に3~5回、少し息がはずむくらいの速さで歩くだけでも、長い目で見れば脳の健康にとても良い効果があります。

筋力トレーニングで姿勢と代謝を維持
年齢とともに筋力が落ちると、姿勢が悪くなったり、基礎代謝が下がったりします。すると血液循環が滞りがちになり、脳への栄養補給にも影響が出る可能性があります。スクワットや腹筋、腕立て伏せなどの簡単な筋力トレーニングを週に数回取り入れることで、筋肉を維持・増強し、体全体の代謝を高めることができます。
運動は心肺機能だけでなく、認知機能にも好影響があることが示唆されており、脳の血流が良くなることで、集中力や思考力が高まる実感を得られる人も少なくありません。無理なく継続することが、脳の健康維持への近道です。
睡眠で脳をしっかりリセット
脳の休息時間を確保する
忙しい現代社会では、睡眠不足が慢性化している方も多いでしょう。しかし、睡眠は脳にとって非常に大切な“休息”の時間です。私たちが眠っている間に、脳は日中に取り入れた情報を整理し、不要な老廃物を排出します。睡眠時間が極端に少なかったり、睡眠の質が悪かったりすると、脳の修復・回復がスムーズに行われず、認知機能の低下や情緒不安定につながります。

質の高い睡眠をとるコツ
脳をしっかり休めるには「質の高い睡眠」が不可欠です。寝る前にスマートフォンやパソコンなどの強い光を浴びると、脳を覚醒させる原因となるブルーライトが分泌され、寝付きが悪くなることがあります。寝る1時間前からはできるだけ電子機器を控えたり、暖色系の照明に切り替えたりして脳をリラックスさせましょう。軽いストレッチや読書、音楽鑑賞などで気分を落ち着かせるのもおすすめです。
適度な室温と湿度もまた、睡眠の質に大きく影響します。夏はクーラーの使い過ぎに注意しつつ、寝苦しくない温度に調整する、冬は乾燥を防ぐために加湿器を利用するなど、自分が心地よく眠れる環境づくりを心がけてください。
ストレスマネジメントも重要
生活習慣として見逃せないのが「ストレスマネジメント」です。過度なストレスを受け続けると、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、萎縮が進みやすくなるともいわれています。仕事や人間関係でどうしても避けられないストレスは、リラクゼーション法や趣味の時間を活かして上手にコントロールしましょう。
呼吸法や瞑想: 深い呼吸を意識するだけでも、自律神経が整いやすくなり、ストレス軽減につながります。瞑想はハードルが高く感じられるかもしれませんが、ゆっくりと呼吸を数回繰り返すだけでも効果は期待できます。
趣味を楽しむ: 好きなことに没頭している時間は“雑念”から離れやすく、脳に新鮮な刺激を与えます。音楽、絵画、読書、ガーデニングなど、自分なりの楽しみを見つけてみましょう。
誰かと話す: 孤独感を抱えないためにも、家族や友人、同僚などに気軽に近況を話す機会を持つことは大切です。ストレスや不安を打ち明けるだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
脳の「使い方」を意識する
脳の萎縮を防ぐには、脳への物理的なケアだけではなく、“使い方”も大切です。歳を取るほど同じパターンで生活しがちですが、新しいことにチャレンジすることは脳の活性化につながります。たとえば、普段使わない道を歩いてみる、新しい料理に挑戦してみる、楽器や言語の勉強を始めてみるなど、些細なことでも脳への刺激になります。「慣れ」の反対側に「刺激」と「成長」があると意識すると、いくつになっても好奇心を持って行動しやすくなるでしょう。
自分の脳の状態を知ろう!!
もしご自身の脳の萎縮状態が気になる方は、専門的な検査や評価を受けることをおすすめします。最近では、MRI画像をもとに脳の萎縮度や白質病変の有無を詳しく解析できるサービスも登場しています。
「MVision health」は、医療機関で撮影した脳MRI画像をAI技術で解析し、脳の健康状態をわかりやすくレポートしてくれるサービスです。自分の脳が年齢相応かどうか、どの部分に萎縮や変化が見られるかなど、専門的な知識がなくても理解しやすい形で結果を確認できます。
