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抽象雲

フレイルとは?健康寿命を伸ばすために必要な予防と対策について徹底解説!!

  • 執筆者の写真: macky
    macky
  • 7月3日
  • 読了時間: 9分
フレイル
フレイル

「フレイル」という言葉をご存じでしょうか?


あまり聞き慣れないかもしれませんが、実はこの言葉、これからの人生を“健康に、そして自分らしく”過ごすためにとても重要なキーワードです。


フレイルとは、年齢を重ねることで体力や筋力、認知機能、社会とのつながりが徐々に弱くなっていく「心身の衰え」のことを指します。これは単なる老化現象ではなく、早めに気づき、対策をすれば元の元気な状態に戻ることも可能な“可逆的な状態”なのです。


人生100年時代と言われる今、ただ長く生きるだけでなく、「どうすれば最後まで自立した生活を送れるか」が問われています。本記事を通して、フレイルを正しく理解し、健康寿命を延ばすヒントを得ていただければ幸いです。


フレイルとは?

フレイルとは
フレイルとは

フレイル(frailty)は加齢に伴って心身の活力が徐々に低下し、健康と要介護状態の間の段階にある状態を指します。日本語では「虚弱」や「老衰」と訳されることもありますが、近年ではより前向きに、予防と対処が可能な「気づきのサイン」として注目されています。


フレイルの特徴は、「身体的」「精神・心理的」「社会的」側面の3つの観点から捉えられます。

  • 身体的フレイル:筋力の低下や体重減少、疲れやすさなど

  • 精神・心理的フレイル:記憶力や判断力の低下、うつ傾向など

  • 社会的フレイル:人との交流が減る、孤立状態になるなど


このような状態は誰にでも起こり得ますが、早期に気づき、正しい知識と行動によって進行を遅らせたり、回復することも十分に可能です。


特に、適度な運動、バランスの良い食事、人とのつながりを意識した生活は、フレイル予防の基本です。高齢化が進む現代社会において、「フレイル」は誰もが向き合う課題です。しかし、それは「衰え」ではなく、「変化」への対応と捉えることで、より前向きなシニアライフを築いていくことができます。


平均寿命と健康寿命

伸びてきた寿命
伸びてきた寿命

寿命が延びたことは、医療の大きな成果です。しかし、それと同時に浮かび上がってきたのが、「健康寿命」という新たな指標です。


健康寿命とは、「介護を受けたり寝たきりになったりせず、自立して日常生活を送れる期間」のことを指します。日本は世界有数の長寿国でありながら、この健康寿命と実際の寿命との間には約10年前後の差があるとも言われています。つまり、私たちの多くが「長く生きられる」ようになった一方で、人生の終盤を不自由な状態で過ごす可能性も増えているのです。


ここで重要になるのが、先に触れた「フレイル(虚弱)」という概念です。フレイルは、健康と要介護の間にある“移行期”のようなものであり、この段階に気づき、適切な対策をとることが、健康寿命を延ばす鍵になります。

介護要因について
介護要因について

上のグラフに示されているように、近年では「認知症」や「骨折・転倒」、「高齢による衰弱」など、フレイルに起因する要因が介護の主な理由となっています。特に、これらの項目は加齢によって徐々に進行するため、気づいたときにはすでに日常生活に支障が出ているケースも少なくありません。


フレイルは、目に見える病気ではなく、体力・筋力・心の元気がゆっくりと減っていく状態。そのため、「まだ大丈夫」と思っているうちに、気づかないまま進行してしまうのです。


なぜフレイル対策が重要なのか?

  1. 転倒や骨折は、そのまま要介護に直結するリスクが高い

  2. 認知症やうつなど、心の面への影響も大きい

  3. 社会的な孤立や閉じこもりが、さらに悪化を招く


つまり、フレイルの予防・改善は、そのまま健康寿命の延伸に直結する重要なアクションなのです。フレイルは早く気づき、行動すれば、元に戻すことも可能な状態です。そのためにもまずは計測を行い、自分の状態を知ることがとても大切です。


フレイルの悪循環

フレイルの悪循環
フレイルの悪循環

フレイル(虚弱)は、身体的な変化だけでなく、心理面や社会とのつながりまでを含めた「全体的な機能のゆるやかな低下」を意味します。その本質は、一つの機能低下が次の機能低下を引き起こす連鎖構造にあります。


つまり、フレイルは単体で進むのではなく、いくつかの要因が互いに悪影響を与えながら進行していく「悪循環のサイクル」を生み出すのです。このサイクルはゆっくり進むため、本人も家族も初期の段階では気づきにくく、気づいたときには心身の状態が大きく低下しているということも珍しくありません。


この章では、フレイルがどのようにして“負のスパイラル”を形成し、健康寿命を縮めていくのか、そのメカニズムを一つずつひもといていきます。

  1. 脳活力の劣化 ── “やる気”の火が消えかける フレイルの起点としてよく挙げられるのが「脳活力の低下」です。

    加齢や生活の単調化により、新しい刺激が減っていくと、脳の働き──とくに記憶力・判断力・意欲といった“前頭葉的機能”が衰え始めます。これは、身体を動かす司令塔としての脳がエネルギーを出しづらくなる、いわば“やる気のエンジン”が回らなくなる状態ともいえます。


    「何をするのも億劫」「いつも同じことばかりで張り合いがない」──

    そんな気持ちの変化は、フレイルの始まりを告げるサインかもしれません。

  2. 意欲の低下 ── 行動を先送りするように 脳活力が低下すると、生活の中で積極的な行動が減っていきます。「面倒くさい」「出かける理由がない」といった気持ちが強くなり、活動への意欲が減退していきます。

    この段階では、まだ体力的には動けるにもかかわらず、「やらない・行かない・話さない」選択を取りがちです。その結果、日々の活動量が目に見えて落ちていきます。これはまさに“内面から始まるフレイル”であり、多くの場合、本人が自覚しにくいのが特徴です。

  3. 運動不足 ── 体を動かす機会が激減する 意欲の低下にともない、次に訪れるのが「運動不足」です。

    散歩に出かける機会が減り、掃除や買い物も億劫に感じるようになると、日常的な身体活動のレベルが低下します。階段よりもエレベーター、徒歩よりも車を選ぶようになると、知らないうちに1日1,000歩も歩かない生活になることも。

    筋肉は「使わなければ衰える」ものです。動かない生活が続けば、体力もバランス能力も確実に低下していきます。

  4. 筋肉量の低下 ── 立ち上がるのがつらい、転びやすくなる 運動不足の生活が続くと、体の中でもとくに「筋肉」が大きな影響を受けます。中でも脚まわりの筋力(大腿四頭筋など)は、日常動作の基盤であり、ここが衰えると、立ち上がる・歩く・階段を上るといった動作に苦痛や不安を感じるようになります。

    やがては「転倒のリスク」が高まり、「このままでは危ない」という不安が本人の中に生まれます。そしてその不安が次の段階──さらなる活動の抑制へとつながっていくのです。

  5. 活動範囲の縮小 ── 外に出なくなる「引きこもり状態」 筋肉の衰えや転倒への不安は、自発的な行動の制限を引き起こします。「出かけても疲れるだけ」「もし転んだら…」という思いが行動を抑え、自宅にこもりがちになります。

    買い物はネットで済ませ、病院にも必要最低限しか行かない。趣味の集まりも辞退し、人と会う機会が激減する──

    こうして社会との接点が急激に少なくなることが、心身のさらなる低下の引き金となるのです。

  6. 社会的孤立・刺激不足 ── 心の活力まで萎んでいく 人との会話、表情のやり取り、共感、笑い──

    こうした**人間関係の中で生まれる“感情的刺激”**は、脳と心の健康にとって極めて重要です。

    しかし外出や交流の機会が失われると、これらの刺激が極端に乏しくなり、孤独や閉塞感、抑うつ傾向が現れ始めます。そしてそれは、再び脳活力を低下させるトリガーとなり、冒頭に戻る“負のスパイラル”を加速させるのです。


フレイルを回避するために

健康管理サイクル
健康管理サイクル

フレイルの進行を防ぐには、「気づいたときに、すぐ動くこと」が何よりも大切です。

そのためには、自分の体の状態を客観的に知り、必要な知識を身につけたうえで、実行可能な対策を取り入れていくことが重要です。ここで紹介するのは、フレイル対策を生活の中に無理なく組み込むための「健康管理サイクル」です。


このサイクルは、「測る → 知る → 行動する」という3つのステップで構成されており、シンプルながらも継続しやすく、確かな効果が期待できる方法です。


【1】測る:フレイルの“見える化”

まずは、自分の身体の状態を「見える化」することから始めましょう。

体形・体脂肪・筋肉量などを定期的に測定することで、変化の兆しにいち早く気づくことができます。加齢とともに起きる心身の変化は、主観だけでは判断しづらいため、数値で客観的に把握することがフレイル予防の第一歩です。


最近では、地域の健康イベントや医療機関、またはフィットネス施設などでも簡易測定が可能なサービスが増えており、気軽にチェックできます。


【2】知る:測定結果とフレイルの知識を理解する

測定した数値は、ただ見るだけでなく、「何を意味しているのか」を知ることが重要です。

体重や筋肉量がどの程度落ちているか、脂肪がどこに蓄積しているかといったデータを通して、フレイルリスクの有無や、どの分野に注意すべきかが見えてきます。

あわせて、フレイルの正しい知識も学びましょう。例えば、筋肉は年齢とともに自然と減少すること、しかし適切な運動と食事で維持・回復が可能であることを知っていれば、不安にとらわれず前向きに対策を講じることができます。


【3】行動する:今の状態に応じた実践的な対策を

状態を「測って知った」だけでは、フレイルは止まりません。そこから“行動”につなげることこそが最大の鍵です。

  • 筋肉量が低下していれば、スクワットやかかと上げ運動などの筋トレを日課に取り入れる

  • 内臓脂肪が気になるなら、食事の質や摂取タイミングを見直す

  • 外出が減っている場合は、近所への散歩や地域のサロンへの参加を習慣にする

こうした行動は、完璧である必要はありません。大切なのは「できることを、できる範囲で、継続すること」です。

毎日の小さな積み重ねが、フレイルの進行を食い止め、健やかな暮らしを支えてくれます。


行動を習慣に変えることが、未来の健康への投資

「測る → 知る → 行動する」という健康管理サイクルは、一度で終わるものではありません。継続的に繰り返すことで、自分の体の変化に敏感になり、フレイルを未然に防ぐ体質と意識が身についていきます。


まとめ

フレイルは、誰にでも起こりうる自然な変化です。

しかしその変化に早く気づき、自分の体と心に向き合い、日々の暮らしの中で小さな行動を積み重ねていくことで、その進行を防ぎ、より豊かな人生を歩むことができます。


フレイル対策に早すぎるということはありません。

むしろ、「まだ元気だからこそ始められる」ことこそが、本当の意味での予防です。


自分の体を知ること、理解すること、そして行動すること。

その一つひとつが、将来の自立した暮らしを支える土台となります。


今日からできることを少しずつ――

フレイル予防は、未来のあなたに贈る、何よりも価値ある“習慣”になるはずです。

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